2011107日(金)10時からミサ ミサ後(10時45分より)

カトリック百合ヶ丘教会マリア会主催:音楽講座



 講師 国本静三

 

ヴァティカンの秘曲、アッレグリ「ミゼレレ」


A.ルネサンスからバロックへ

ドイツのルターの宗教改革(1517年)、英国宗教改革(1533年)、そしてローマ市民を震撼させたドイツ皇帝カール?の軍隊によるローマの攻略(略奪 1527年)によるローマ市内の壊滅的な損害は、カトリック教会側に大きな打撃を与えた。それに対してカトリック教会の反撃と反省を示す反宗教改革が起こった。それを示す一つがトリエント公会議(1545-63年)であった。この公会議で教会音楽についても改正、教会芸術の簡素化の取り決めが多く行われた。こうした情況でヴァティカン内部のシスティーナ礼拝堂で奉職した音楽家の一人がパレストリーナである。

 パレストリーナ(c.1525-94)はルネサンス音楽の黄金時代の頂点を築いた作曲家で、教皇庁システィーナ礼拝堂音楽家として奉職した。丁度この時期はルターの宗教改革の影響を受け、カトリック教会においても簡素にして清楚な典礼音楽が推進された。そのためかやや禁欲的な要素も感じられるが、この時代の音組織である教会旋法による水晶のように澄んだ純正な響きは、人間世界を越えた天上の音楽を思わせる。パレストリーナはア・カペラ様式を確立したといわれる。聖堂のための音楽、つまり教会音楽を意味するア・カペラa cappellaという語は、現在分野を区別することなく無伴奏の合唱や重唱、独唱さえ指して使われている。

 グレゴリオ・アッレグリGregorio Allegriイタリア(1582-1652)は、初期バロックに属している。1591年ローマ、サン・ルイージ・ディ・フランチェージ教会の少年聖歌隊員となった。この教会はナヴォーナ広場近くに位置し、この教会内部左側5番目礼拝堂にカラヴァッジョ(1573-1610)の3部作「聖マタイと天使」「聖マタイの召し出し」「聖マタイの殉教」があることで有名である。1607年にマルケナ州、アドリア海に面したフェルモ大聖堂楽長に、1629年教皇礼拝堂歌手になった。1638年に教皇礼拝堂の一つシスティーナ礼拝堂のために9声部の「ミゼレレ」を書いた。この曲は複合唱cori spezzatiの形態を取っている。この曲は毎年聖週間における朝課(マトゥティヌムMatutinum 現在は読書、0時以後から午前中に唱える時課の祈り)において使われるようになった。

 厳格な雰囲気をもつ、反宗教改革精神を示す。伴奏部無しに書かれた多声音楽である。際だったソプラノ高音が用いられているが、当時はカストラート(去勢歌手)が歌った。ヴェネツィアに現れたバロック特有の華やかな協奏曲と比べると、地味で反宗教改革における世俗的要素を棄て粛正しようとする方向に傾いた作品である。ローマ様式といわれる。「ミゼレレ」は門外不出のシスティーナ礼拝堂の門外不出の秘曲として伝えられていた。さて、1770年父とローマに来ていた14歳の少年モーツァルトは聖週間の典礼としてこれをシスティーナ礼拝堂で聴き(早朝か午前中と思われる)、宿に帰って譜面に記憶に基づいて書き表した。この正確性が教皇庁で認められ、モーツアルトは騎士の位に就く黄金軍騎士勲章を受けた。

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 [旧約・詩編51・3-21「新共同訳聖書」]

神よ、わたしを憐れんでください、御慈しみをもって。

深い御憐れみをもって背きの罪をぬぐって下さい。

わたしの咎をことごとく洗い罪から清めて下さい。

あなたに背いたことをわたしは知っています。

わたしの罪は常にわたしの前に置かれています。

あなたに、あなたのみにわたしは罪を犯し 

御目に悪事と見られることをしました。

あなたの言われることは正しくあなたの裁きに誤りはありません。

わたしは咎のうちに産み落とされ母がわたしを身ごもったときも

わたしは罪のうちにあったのです。

あなたは秘儀ではなくまことを望み秘術を排して知恵を悟らせて下さいます。

ヒソプの枝でわたしの罪を払ってださい わたしが清くなるように。

私を洗って下さい、雪より白くなるように。

喜び祝う声を聞かせてください。

あなたによって砕かれたこの骨が喜び躍るように。

わたしの罪に御顔を向けず 咎をことごとくぬぐってください。

神よ、わたしの内に清い心を創造し 新しく確かな霊を 授けてください。

御前からわたしを退けず あなたの聖なる霊を取り上げないでください。

御救いの喜びを再びわたしに味合わせ 自由の霊によって支えてください。

わたしはあなたの道を教えます あなたに背いている者に

罪人が御もとに立ち帰るように。

神よ、わたしの救いの神よ 流血の災いからわたしを救い出してください。

恵みの御業をこの舌は喜び歌います。主よ、わたしの唇を開いてください。

この口はあなたの賛美を歌います。

もしいけにえがあなたに喜ばれ 焼き尽くす献げ物が御旨にかなうのなら

わたしはそれをささげます。しかし、神の求めるいけにえは打ち砕かれた霊。

打ち砕かれ悔いる心を 神よ、あなたは侮られません。

御旨のままにシオンを恵み エルサレムの城壁を築いてください。

そのときには、正しいいけにえも 焼き尽くす完全な献げ物も、

あなたは喜ばれ そのときには、あなたの祭壇に 雄牛がささげられるでしょう。

《参考》

<複合唱>

パレストリーナPalestrinaイタリア(c.1525-94)

 モテトゥス「今日キリストは生れた」               A:11

複合唱+合奏

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ヴィヴァルディVivaldiイタリア(1678-1741)

 「グローリア ニ長調 RV589」           B:6

複合唱+合奏⇒協奏曲

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バッハJ.S.Bachドイツ(1685-1750)

「マタイ受難曲BWV244」 A:2

第1曲

2群の合唱と少年合唱コラール「おお罪なき神の小羊」

複合唱3+管弦楽2+オルガン2



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