「病者の秘跡」とは
―主任司祭メッセージ 2/13―



 

 “しるし”の内にいつもわたしたちと共におられるイエズスさまですが、わたしたちは、またしるしを通してイエズスさまに出会いその救いにあずかる者です。イエズスさまがご自分の教会に預けられたしるしの中で、ことに七つの秘跡があります。
 水のしるし(「洗礼」)を通して、わたしたちを御自分のいのちに呼んでくださり、「堅信」による聖香油のしるしを通して、わたしたちをその新しいいのちの実を結ぶことができるように御自分の聖霊を与えてくださり、さらに「エウカリスチア」(聖体の秘跡)にあずかることによって、わたしたちをそのいのちで養ってくださり、わたしたちを神さまに喜ばれるささげものとし、その愛の礼拝にふさわしい者としてくださいます。これらの秘跡は、「入信の秘跡」としても知られています。
 この三つの秘跡の他に、そのいのちと関係する祭司職の秘跡(「叙階」の秘跡)と「結婚」の秘跡がありますが、それらについてはすでにお話いたしました。
 残る二つの秘跡は人生の旅路に関わり、その旅路の途中の病気につながる秘跡です。「病者の秘跡」は身体の病気、「ゆるしの秘跡」はこころの病気である罪と関わるものです。これらの秘跡によって、わたしたちを癒してくださるイエズスさまと出会い、わたしたちはその救いの恵みにあずかる者です。

 今日は「病者の秘跡」について簡単にお話し しましょう。
 二年前から続くこのコロナ禍で、七つの秘跡の中 ことに「病者の秘跡」にあずかることが難しくなっています。秘跡は見える体のしるしを通して見えない恵みを与えるものですが、病者の秘跡は、ことに身体の健康に関わる秘跡ですので、現在は司祭が秘跡を授けにくい状況です。
 福音書の中には、イエズスさまが「触れる」ことによって病気を癒してくださるいろいろなエピソードがあります。それは神さまがくださる“救いのしるし”となっていました。今は「奇跡」といわれる身体の癒しも、キリストの死の勝利である“復活”のしるしとなっています。
 こうしてキリスト信者は、さまざまな試練と同じように病気を“恵みの時”として理解し、この地上の旅路を神の子どもの心をもって生きることを学ぶ者です。この経験を通して、わたしたちはイエズスさまと共に十字架の神秘に加えていただき、キリストさまがもたらされる新しいいのちにあずかります。ミサの聖変化のときに、教会が宣言するとおりです。

主の死を思い、復活をたたえよう、主が来られるまで、 と。
 わたしたちに大きな希望が与えられていることをいつも新たに学ぶものですね。

 次に病者の秘跡はだれのためにどこで、またエウカリスチア(ミサ)とどんな関係があるかをお話しましょう。
 病者の秘跡は、健康状態に何らかのいのちの危険がある方のためのものです。年を召した方の状態もこの中に含まれます。病者の秘跡は何らかのいのちの危険がある時に限って行われるものです。この秘跡をいただいた人がまた同じ事態に陥った時は、あらためてもう一度お願いするものです。
 エウカリスチアが毎日のわたしたちの生活を支えます。普通の健康状態でも、病気に出会うときも、わたしたちがその助けを求めるところはエウカリスチアですね。
 場所については、他の秘跡と同じように病者の塗油もいつもは教会で行われますが、場合によっては自宅や病院で行うこともあります。事情によって短い形で行われることもあります。司式者はいつも司祭です。この病者の秘跡にエウカリスチアの秘跡がともないますが、場合によってこのときのご聖体拝領は旅路の最後の糧として知られています。

 ここで病者のご聖体拝領について思い出させていただきます。病気のために教会に来られない人々にご聖体を運ぶしきたりは昔からあります。つまり主日の集まりに参加できなかった人々に、司祭が選ばれた人にご聖体をお預けして運んでいたのです。こうして、教会まで足を運ぶことができなかった兄弟姉妹との一致を図っていました。今は司祭が少ないこともあって、選ばれた信徒を通して病者にご聖体を運ぶことになっています。

 ここで、病者と関わる今日の教会の態度についてお話させていただきましょう。
 実は、毎年2月11日が「世界病者の日」
(注)として定められていることは御存知かとおもいます。それはルルドで聖ベルナデッタにお現われになったマリア様がきっかけです。その時のマリア様のメッセージは、病者と罪人の癒しを呼びかけるものでした。そのとき(1858年)から、ルルドは病者の巡礼地となり、たくさんの癒しのエピソードが続いています。これがきっかけで、世界中の教会の庭にルルドを思い出すグロット(洞窟)を建てる習慣が始まりました。皆さんの中でルルドまで足を運んだ方もいるでしょう。私自身も巡礼の司祭としてルルドを訪れたことがありますが、大勢の巡礼者がそれぞれの国の言葉でロザリオを唱える中、日本語で唱えたことを思い出します。イエズスさまとともに、マリア様は教会の中で母なる方としておられます。十字架上でのイエズスさまのお言葉どおり…。

イエスは、母とそのそばにいる愛する弟子とを見て、母に、「婦人よ、御覧なさい。あなたの子です」と言われた。それから弟子に言われた。「見なさい。あなたの母です。」そのときから、この弟子はイエスの母を自分の家に引き取った(ヨハネ 19・26〜27)

また聖マリアの連願を唱えるとき、「病人の希望  われらのために祈り給え」と祈ります。




ではまた来週!

(注)1993年から「ルルドの聖母の記念日」である2月11日は、毎年「世界病者の日」として聖ヨハネ・パウロ二世によって定められました。

カトリック百合ヶ丘教会主任司祭 マリオ・ビアンキン

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* 典礼用に、日本の司教団は「新共同訳」の聖書を使うように定めています。
ここに載せる聖書は、「新共同訳」の聖書です。