聖マリアが霊魂も肉体もともに天に上げられたという教義で、1950年11月1日に、教皇ピオ十二世(在位1939〜1958)が全世界に向かって聖マリアの被昇天の教義を交付しました。
聖書の中で、聖母の被昇天については直接記されていませんが、カトリック教会は、何世紀にもわたって伝達されてきた伝承(聖伝)を聖書とともに大切にしてきました。
この聖母の被昇天の教義も、神から啓示された伝承の一部分であることをかつての司教たちが一致して認め、ピオ十二世が公に教会の教義であることを公布することによって、マリアが神の母であることを特に強調したと考えられます。
この8月15日が聖母マリアの祝日であることについて、歴史的に次のように言われています。5世紀のエルサレムでこの日に祝われていた神の母マリアの記念は、6世紀には、マリアの死去の日として東方教会で祝われるようになりました。この死去は、マリアが天に召された(帰天)ことと永遠のいのちのうちに誕生したこととして記念されていたようです。やがて7世紀半ばに西方教会にも受け継がれ、教皇セルジオ一世(在位687〜701)は、徹夜祭やハドリアヌス教会からサンタ・マリア・マジョーレ教会までの行列などで盛大に祝っています。マリアの被昇天の名で知られるようになったのは、8世紀末になってからです。こうして1950年のピオ十二世の教義宣言に至るまでマリア信心の深まりと同時に、次第にこの日を特別な日として祝うようになりました。
聖母の被昇天への信仰は、マリアだけが特別な存在だと言い表すのではありません。キリストによる救いにあずかる人たちの象徴として、信じるすべての人たちの救いへの希望を表現するものです。ミサの集会祈願はこのことを教えます、「全能永遠の神よ、あなたは、御ひとり子の母、汚れのないおとめマリアを、からだも魂も、ともに天の栄光に上げられました。信じる民がいつも天の国を求め、聖母とともに永遠の喜びに入ることができますように」。
これは「おめでとう、恵まれたかた」(ルカ1・28)と神の使いからのあいさつを受け、神がともにおられるという恵みに満ちたものであるが故に、その生涯においてキリストと最も深く結ばれ、死後においてもキリストの復活と栄光にあずかっていることを意味します。つまりマリアは復活の恵みを受け、キリストを通しての神における人間の完成に到達したことを確信をもって宣言しているのです。(カトリック中央協議会HP「聖母の被昇天」より抜粋)