主任司祭 鈴木 真 神父 主日の説教

 もくじ   


聖家族(12/29)A年(マタイ2:13〜15, 19〜23)

毎年この聖家族の日を迎えるたびに「家族」というものについて色々と思いをめぐらせますが、今年はあることを思い出しました。

わたしは百合ヶ丘に来る前に茅ヶ崎に7年いましたが、茅ヶ崎には昔から有名な網元直営の料理屋があります。新鮮な魚介類が安く食べられるので有名でしたが、近年拡大進出して、スーパーなどに惣菜や弁当を出すようになりました。素材にこだわり、拡大しているわりに質が落ちないのがすごいと思っていましたが、わたしが茅ヶ崎にいる時には駅前に大きなレストランを出していました。ある時そこで料理長をやっていた人が突然やめて、駅の反対側のビルに小さな店を開きました。カウンター中心の12~3席の店で、店の名前が「かぞ食(く)」というんです。そこにも何度か行きました。料理も美味しかったですが、何よりいつもカウンターは常連客でいっぱいで、店主もお客と和気あいあいに楽しそうに仕事をしてました。それを見て、なるほどこういう店をやりたかったのだなと思い、また店の名前にも納得しました。料理人の方にはそういう人が多いという話もよく聞きます。有名な大きなホテルや料亭の板長が、辞めて小さな店を出す。自分の目の届く仕事がしたいのだとそういう人は言いますが、お客と直接顔と顔とを合わせる仕事がしたくなるんでしょうね。わたしも料理が好きなのでよくわかります。自分の作った料理を人が目の前で食べて「美味しい」と言ってくれる事こそ、料理人冥利に尽きるというものでしょう。人と人とがじかに触れ合うことの大切さ、ということでしょうか。

今の若者たちを見ていてもそれがよくわかります。これだけ言わばコミュニケーション・ツールがデジタル化される中で、若者たちはある意味で常に他人と「つながって」いるわけです。「○○って最近どうしてる?」「あ、元気みたいっすよ。この前ラインに書いてました」‥みたいな。わたしは全然ついてゆけません。でもそのわりに、いやだからこそでしょうか、若者たちは実際に「会う」ことをいつも求めています。毎年春と秋に「ネットワークミーティング」という全国のカトリックの青年達の集まりを教区持ち回りでやっていますが、毎回150人超の若者が文字通り全国各地から集まります。人と人とがじかに触れ合うことの大切さを、若者たちも本能的にわかっているということなのでしょう。

「家族」とは、その「触れ合い」の言わば最小単位であるわけで、だからこそ大切なものとも言えると思います。わたしも普段は家族と離れていますが、いつも支えられていると強く感じます。ただ逆に、家族という血のつながった間であるからこそ難しいところもあるとは思いますが。そんなことすべてを含めて、「家族」とは与えられている大きな恵みなのでしょう。

そして教会という「家族」にも同じことが言えると思います。わたしは特に司祭という立場であることから、教会という家族にも常に支えられています。そして赴任地が変わるたびに、その「家族」が増えてゆくわけです。そして、教会という「家族」は実に様々なところで、そして意外な形で、色々な人がどこかでいつも「つながって」います。それに出会い、それを発見するたびにこれは実に神さまのわざ‥と感じるわけですが、それは神さまが人と人とが支え合い助け合って生きてゆくように造られた事の、大きなしるしでもあるのでしょう。

様々なレベルの与えられた「家族」という恵みに感謝すると共に、色々な事情で家族と離れている人、また家族のいない人のためにも、御一緒に祈りたいと思います。

マタイによる福音(2:13〜15, 19〜23)


 占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。


 ヘロデが死ぬと、主の天使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて、言った。「起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。」そこで、ヨセフは起きて、幼子とその母を連れて、イスラエルの地へ帰って来た。しかし、アルケラオが父ヘロデの跡を継いでユダヤを支配していると聞き、そこに行くことを恐れた。ところが、夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、ナザレという町に行って住んだ。「彼はナザレの人と呼ばれる」と、預言者たちを通して言われていたことが実現するためであった。


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