19. 最上のわざ
この世の最上の業は何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうな時に希望し、
従順に、平静に、おのれの十字架を担う――。
若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、けんきょに人の世話になり、
弱って、もはや人の為に役立たずとも、親切で柔和であること――。
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老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最後のみがきをかける。まことのふるさとへ行くために――。
おのれをこの世につなぐくさりを少しずつはずしていくのは、真にえらい仕事――。
こうして何もできなくなれば、それをけんそんに承諾するのだ。
神は最後にいちばん良い仕事を残してくださる。それは祈りだ――。
手は何もできない。けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために――。
すべてをなし終えたら、臨終の床に神の声を聞くだろう。
「来よ、わが友よ、われなんじを見捨てじ」と――。
「人生の秋」 ヘルマン・ホルベルス著 春秋社