病気のときの祈り





20. あしあと



ある夜、わたしは夢をみた。

わたしは、主とともに、なぎさを歩いていた。

暗い夜空に、これまでのわたしの人生が映し出された。

どの光景にも、砂の上にふたりのあしあとが残されていた。

一つはわたしのあしあと、もうひとつは主のあしあとであった。

これまでの人生の最後の光景が映し出されたとき、

わたしは、砂の上のあしあとに目を留めた。

そこには一つのあしあとしかなかった。

わたしの人生でいちばんつらく、悲しい時だった。

このことがいつもわたしの心を乱していたので、

わたしはその悩みについて主にお尋ねした。

 「主よ。わたしがあなたに従うと決心したとき、

 あなたは、すべての道において、わたしとともに歩み、

 わたしと語り合ってくださると約束されました。

 それなのに、わたしの人生のいちばんつらい時、

 ひとりのあしあとしかなかったのです。

 いちばんあなたを必要としたときに、あなたが、なぜ、

 わたしを捨てられたのか、わたしにはわかりません。」

主は、ささやかれた。

 「わたしの大切な子よ。わたしは、あなたを愛している。

 あなたを決して捨てたりはしない。ましてや、苦しみや

 試みの時に。あしあとがひとつだったとき、

 わたしはあなたを背負って歩いていた。」


            『あしあと』 マーガレット・F・パワーズ著 松代恵美訳  (財)太平洋放送協会      




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